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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2017年度 第53回 受賞作品

西日本新聞社賞

さ・し・す・せ・そ

福岡市立  名島小学校5年村瀨 美恋

「すわ、すわ、すわ。さ、さ、さ。」

 今日も弟の言葉の練習が始まった。先生は私。

 私の弟は小学四年生。うまく話せない言葉がたくさんある。たとえば、「さしすせそ」が「たちつてと」となってしまう。だから、一生けん命話しても、人に分かってもらえないことが多い。でもなぜか、私にはほとんど分かる。時々母にも、弟が言っていることを、私が教えてあげることがある。

 弟は月に一回、病院で言語訓練をしている。言葉を教えてくれるつつみ先生は「言語聴覚士」というそうだ。最初に私が訓練を見に行ったとき、ストローで息をふぅーっとはいて、ストローの先にあるティッシュを動かす練習をしていた。弟は一生けん命息を出そうとしていたけど、まったく息は出ていなかった。

「うまく力を入れられないのかな。」

と思いながら見ていた。弟は月に一回、とても楽しそうに通い、帰ってくると、コップに水を入れてブクブクあわを出す練習をしたり、ティッシュをふぅーっと遠くにとばす練習をしたりしていた。私にはかんたんにできることが、弟にはとてもむずかしそうだった。

 久しぶりに弟の訓練について行った。すると、前はできなかったストローで息をふくことができるようになっていた。

 「言語聴覚士さんが教えることってすごいな。」

と思った。他にも、「すあ」と先に言ってから「さ」と言うことができた。つつみ先生が、家でも練習できるように宿題を出してくれた。

「冬休み、あなたが先生になって練習して。」

と母に言われ、私は弟の言葉の先生になった。

 冬休み、さっそく練習を始めた。弟が大好きな嵐メンバーの名前にもたくさん「さ行」が入っているので練習に使った。でもどうしても「あいばましゃき」になってしまう。つつみ先生のまねは、とてもむずかしかった。でも弟が言えない言葉をゆっくり大きな口を開けて教えると少しずつ上手になった。上手になってくると、もっと一緒に練習したい気分になった。

「サンタさんがスシローでスシを食べた。」

弟が楽しく練習できるサ行の文を考えて、練習もした。「ツチロー」ではなく、「スシロー」と言えたとき、とてもうれしかった。つつみ先生たちも、うまく話せない子たちが話せるようになると、とてもうれしいんだろうなぁと思った。

 いつもできてなかったことができるようになると、うれしい気持ちになる。うれしくなることはたくさん続けてほしい。毎日練習をがんばれば、弟の言葉もいろんな人に通じ、楽しく話せるようになるということが弟の先生になってわかった。弟には、これからも、たくさん話したり歌ったりして明るく元気に言葉の練習をがんばってほしいと思う。

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