2017年度 第53回 受賞作品
全共連福岡県本部運営委員会会長賞
ハワイで学び得たこと
福岡県立 育徳館中学校2年八谷 美桜
「ハワイの文化や考え方を肌で感じ、視野を広げること」これが私の学び得たことである。実は昨年の八月終わり、私はハワイへ行ったのだ。町の事業の一環で、一週間のホームステイを楽しんだ。
滞在先のお宅にいたのは国際結婚をしていた日本人のお母様。このホームステイの五ヶ月前にご主人を亡くされていた。辛くてそんな余裕などないはずなのに、ご主人の「受け入れたい」という遺志を継ぎ、私達を快く受け入れてくださった。感謝の気持ちとあたたかさでいっぱいになった。
言葉こそ日本語だったが、毎日の主食はお米というよりもハッシュドポテトやマフィンだった。でも少しでも日本らしさを、とハワイではあまり使わないお箸を出してくださるその心遣いも嬉しかった。不安でいっぱいだったホームステイ。気持ちが前向きになった。クランベリージュースを飲もうとした時、私はラベルに書かれた「OZ」がなぜだかとても気になった。アメリカではmlやgではなく「オンス」という質量単位を常用するそうだ。それは昔ながらで、他国がmlやgなどを使う中、あえて変えないその個性や芯の強さをお母様から教わった。協調性を気にするあまり、周りに流されてしまうというのは日本ではよくあることだ。しかしそんな考えを思い切り崩してくれた。身近で小さなことだが、何気ないことから大切なことを学べた。
家の中では日本語だったからこそ、外では店員さんや警備員さんに積極的に英語で話しかけた。空港で手続きをする時も私が鞄を重そうにしていると「Can you?」と声をかけてくださった。「Maybe……」と言いながら運びきった時は笑顔で拍手してくださった。使ったのは簡単な言葉だったけれど、国境をこえて心が通じた気がした。現地の方のフレンドリーさは私の予想をはるかに越えていた。喜怒哀楽がはっきりされているので本当に話しかけやすかった。日本だったらきっと困惑しただろう。小さなことですぐにくよくよするのではなく、ちょっとの勇気で一歩踏み出すことの大切さを学んだ。また、会話の中で日本語より先に英語が出ることも幾度となくあった。「習うより慣れろ」確かにそのとおりだ。瞬間的に日本語と英語を切り替える臨機応変さもさらに培うことができた。
そんな中、最も日本との違いを感じたのは、朝の市場だった。日本では道ゆく知らない人に挨拶をするというのはほとんどないはずだ。しかし市場では、あらゆる所で挨拶が飛び交っていてとても賑やかだった。コーヒーを売る久留米の人、スターフルーツを並べるアフリカ人。老若男女国籍を問わずコミュニケーションをとるというのはとても魅力的なものだった。目からウロコの、見慣れない光景だったけれど朝から清々しい気持ちになれた。
日本と違うところがたくさんあるから、より充実していて、よりおもしろみのあった一週間。数々の貴重な体験をさせていただき、些細なことを必要以上に気にしない柔軟さや、どんなことが起きても大丈夫という強さ、逞しさも身につけることができた。
このような一生忘れられない旅ができたのも家族や親戚、たくさんの周りの方々のおかげである。インターナショナルスクールに通っているはとこには、事前に有名なお土産スポットについて教えてもらっていた。体調管理の仕方や機内での過ごし方など、実際に現地に行かないと分からない注意点も多くきかせてもらった。
でもやはり親元を離れることで、改めてそのありがたみを知ることができたというのが一番だった。海外旅行をしたことのない私にとって七日というのは思いのほか長かった。普段家に帰れば当たり前にいる家族が恋しくなった時が何度もあった。八つ当たりしたり、反抗したりするのを受け止めてもらっていることが申し訳なくもあり、ありがたくもあった。そうして帰国した時のご飯とお味噌汁はやはりあたたかく心に染みた。いつものお風呂、いつもの布団。そして何より家族の存在。大きな安心感から少し泣きそうになった。私にとって当たり前のことは決して当たり前なのではなく、感謝するべき大切なことなのだなあと改めて感じた。だからこそこれからの日本での何気ない日々も大切にしようと思った。
大きな海をこえ、自分なりの言葉で思いを伝えたワクワク、ドキドキのホームステイ。時には表情やジェスチャーでグローバルな心のつながりを持つことができたと思う。日本を客観的に見つめ、自分にはまだ知らない世界があるんだ、と視野を広げる良い機会となった。この旅は私史上最高でかけがえのないものとなった。ハワイは異世界のようだったが、国や言語が違っても同じ地球に生まれたと思うとどこか親近感もあった。世界共通の優しい心にもたくさん触れることができた。
「世界は広いが心はひとつ」――ホームステイに行かなければ、チャレンジしようと思わなければ出会わなかった人達。今日も同じ空の下、笑顔で過ごしていることを祈って、私は虹のかかった青空を見上げた。