2017年度 第53回 受賞作品
全共連福岡県本部運営委員会会長賞
次こそは
福岡市立 香陵小学校6年湯本 莉乃
私は、母と姉との三人暮らしだ。
それは、父が仕事で全国を駆け回っているからだ。ここ最近では、東京勤務が四年続いている。単身赴任で一人暮らしが長いせいか、夜帰りもおそく、飲み会も多く、食生活が不規則である。
だいたい二か月に一回程、福岡へ帰って来るのだが、父が帰って来ると家族がそろい、ガハハと大きな口を開けて、面白い話をして笑っている。その笑う父を見て、私達もゲラゲラと笑いが止まらない。
そんな父には、一つ困ったことがある。
「ただいまあ。」
玄関に駆け寄ると、
「あちゃちゃちゃちゃ。」
私は、開いた口がふさがらなかった。
父のお腹はますます出て、顔は鏡餅のようにまん丸くなっていたのだ。
私と姉でいつも、
「ダイエットせな。」
「一緒に走ろう。」
と言っているのだが、そのお腹は手強く、父はやろうとしない。
お正月の夜、私は、アルバムを見ていた。
「あっ。いいの見つけた。」
そこには、若くてやせている父の写真が。
「うひゃあ。いつのよ、これ。」
「この時くらい、やせなね。」
「元の自分の体なんやけん、ここまではやせられるやろ。」
父にやる気スイッチは、入っただろうか。
すると翌日、
「温野菜が作れるような、スチーム調理器ないかね。」
父がそう言ったので、私は一生懸命探し回り、見つけて渡した。
東京へ帰る日に
「今度は、やせて帰ってくるけんね。」
いつも帰り際に言ってくる、父の口癖だ。
それが実現したことはないけれど…。
すると、その日の夜。
母のスマートフォンに写真が送られてきた。父からだ。見てみると、ササミやかぼちゃ、じゃが芋などを調理したものだった。
「おお。ヘルシーやん。本当に作っとう。」
今度帰って来る時には、あの昔の写真のようにさわやかに、やせているだろうか。
父には、祖父のように孫と元気に遊んでほしい。
そのためには、長生きしてもらわなければならない。
この調子で食べるものに気を付けて、健康に気遣い、昔のような若々しいやせたパパで私達家族のそばにいてね。