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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2017年度 第53回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

新しい自分になるために

福岡市立  平尾小学校5年石川 泰成

 分厚いコートをつきぬけて、キンキンに冷えた冬の空気が僕の体につきささる。

「ゴォオーン。」

冷えた空気をふるわせて、低いうなりのような鐘の音がひびいてきた。

 十二月三十一日、大晦日は、毎年うきはの祖父の家に家族が集まる。普段会えない祖父やいとこたちと一緒に、近くのお寺に除夜の鐘をつきに行くのは、僕が幼稚園のころからの恒例だ。年が変わるこの時間は、いつもだったらとっくに寝ているころだが、寒さと鐘つきを待つ緊張感で眠気は全くない。それでも、以前の僕だったら、鐘をつき終わると、帰りの車の中ですぐに眠ってしまっていた。でも、あともう少しで六年生になる今年は、鐘つきの後の三社参りまで絶対起きてやると心に決め、そしてばっちり起きることができるようになった。

「ゴオォンオーンオーン。」

列が前に進み、僕の番が近づいてくると、いよいよ音は大きくなり、お腹をグーでなぐられたような感覚になる。僕は、昔、母から聞いた話を思い出していた。

「除夜の鐘つきは、百八回。それは、人間の中にある百八つ の煩悩の数なの。煩悩って、欲望や怒り、苦しみなどの心 の乱れって言われているけど、そんな嫌な気持ちを持った まま、新しい年を迎えるのは嫌でしょう。だから鐘をつい て追い払うのよ。」

 最初に教えてもらったとき、僕はあまりピンとこなかった。でも今は、鐘の音を聞きながら、一年間であったことを思い出していた。

 そういえば、軽い気持ちで言ってしまった言葉で、友だちに嫌な思いをさせてしまったことがあったな。母に怒られたとき、悪いことをしたのに反省せず、また同じことをして怒られたっけ。なんだか心の中がざわざわ落ち着かなくなってきた。家族そろっての楽しい鐘つきだったはずなのに。父がそんな僕に気付いたのか、声をかけてきた。

「どうした。何だか元気がないぞ。」

僕は思っていたことを話した。父はしっかり話を聞いてくれて、聞き終わると、少し笑ってこう言った。

「それじゃあ、ますます思いっきり鐘をついて、心の中の嫌 な気持ちを追い出さなきゃな。」

 僕の順番がまわってきた。鐘をゆっくりと見上げて、視線をひもにもどした。にぎった手にぐっと力を込めて、思いきりひもを引いた。強く打ち鳴らされた鐘の音が、僕の頭の中にいっぱいになって、さっきまでぐずぐず考えていた思いがすうっと消えていった。

 はいた息が真っ白になるこんな寒い中、たくさんの人が鐘をついている。みんなきっと、一年のことをいろいろ思いながら鐘をついているのだろう。新しい自分になるために。

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