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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2017年度 第53回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

五人のために

糸島市立  前原東中学校1年谷口 こころ

 「いけいけ、頑張れ。」

 私が、毎年のようにテレビの前で、夢中になって応援している番組。それは、箱根駅伝だ。一本の襷をつなぐため、ランナー達は力強く、粘り強く走る。その姿を見ていると、応援する側の私達も勇気が湧いてくる。ランナー達は、幼い頃から私の憧れだった。

 そして、昨年の春。私は中学生になり、部活動をはじめることになった。選んだのは、駅伝。憧れのあの姿を追いかけてみよう、そう心に決めた。

 駅伝部では、五人の仲間に出会った。出身の小学校は違ったけれど、すぐに仲良くなった。そして、六人で決めたことがある。それは、県大会出場を絶対に果たすということだ。そのために、六人みんなで努力し、最後まで頑張り続けるということも決めた。六人が一つになれた、この瞬間のことは、今でも忘れられない。

 最初の頃、私は遅くても、とにかく全力だった。一つ一つのメニューに精一杯取り組み、途中でやめたり、手を抜いたりは絶対にしなかった。きつくて、辛いメニューだけれど、こなした時の達成感や喜びのため、日々本気で頑張った。

 しかし、駅伝をはじめて四か月経ったとき、私は怪我をしてしまった。走りたいのに走れず、本当に辛かった。周りでは、みんなが頑張っているのに、私はそれを眺めることしかできず、焦りもつのった。みんながどんどん速くなっていく中で、自分だけ、置き去りにされているような気持ちになった。五人には内緒で、泣いたこともあった。今、振り返ってみても辛い。

 けれど、本当に辛かったのは、怪我が治ってからだったと思う。なぜなら、走れないからだ。正確に言うと、体力的に前のように走れないだけでなく、また怪我をしてしまうのではないかという恐怖で走れないからだ。少しでも、痛みを感じると、止まってしまう。きついと思ったら、すぐやめてしまう。その時の私には、そういう癖がついてしまっていた。自分でも、そんな自分が本当に嫌だった。何度も、このままではだめだと、自分に言い聞かせた。

 逃げようとする自分を変えたのは、仲間の言葉だった。

「こころは、最後まで頑張り続けられるに決まっとるやろ、大丈夫っ て。」

ずっと自分一人で悩んでいたけれど、たった一言で、それが消えた気がした。確かに、怪我に対する恐怖心が消えたわけではない。でも、怪我を恐れて走らないのは、私を信じてくれている五人の仲間に失礼だと思った。私は、自分のために走っているわけではなく、五人のために走っているということに気付かされた。

 それからは、どんどんタイムが上がっていった。その度に、五人は自分のことのように、喜んでくれた。喜んでくれることで、もっと速く走ろうという気持ちが強くなる。それは、五人のために走るからだ。仲間のために走るからだ。

 昨年の春、私は駅伝部と出会った。それと同時に大切な五人の仲間と出会った。五人は、それぞれ個性が強く、顧問の先生にもあきれられるほどだ。でも、この五人でなければ、この六人でなければ、私は駅伝を頑張り続けられていないと思う。五人には、何度も何度も助けられてきた。

 もうすぐ二年生だ。後輩も入ってくる。今まで以上にタイムを速くし、フォームや着地の仕方を改善していきたいと思う。そして、後輩にも走ることの楽しさや大変さ、厳しさ、何のために走るかを伝え、尊敬される先輩になれるように努力していきたい。

 最後に、私は駅伝部を選んで、心の底から良かったと思う。辛いことも、きついことも、泣きたいことも、やめたいことも、数えきれないほどあるけれど、それ以上に、楽しいことや、うれしいこと、笑顔になれることがたくさんあるからだ。駅伝は、日々の積み重ねの大切さ、仲間という存在の大切さ、壁を自分の力で乗り越えることの大切さを、私に教えてくれた。でも、まだ私には二年という時間が残っている。もっともっと、たくさんのことを駅伝に教えてもらうつもりだ。もっともっと、たくさんのことを駅伝から学ぶつもりだ。駅伝、あと二年どうぞよろしくお願いします。

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