2017年度 第53回 受賞作品
福岡県教育委員会賞
まけないぞ
福岡市立 博多小学校1年あらさき そお
「ワッハッハッハ、すごい。」
ひざをたたきながら、じいちゃんが大わらいした。おんせんへむかう車の中でのことだ。
「二十たす二十は。」
「三十たす三十は。」
「もっとむずかしいもんだいを出して。」
と、ぼくはおねがいした。そこで、まえをはしる車のナンバープレートのすう字をたしたりひいたりして、ぜんもん正かいしてみせた。かんたんにこたえられたわけではない。だんご虫のようにまるくなってシートにかおをうずめて、かんがえた。
「中学生になれるのじゃない。」と、目になみだをためながらじいちゃんがいった。えへへとぼくもわらった。
じいちゃんは、とおいしまにすんでいる。ひこうきに二かいのる。
ある日、
「はあ、すごい、すごい。」
じいちゃんがテレビでんわのむこうで目をパチクリさせた。せんせいに「すばらしい。」と、はなまるをもらったかん字ノートを見せたからだ。しばらくたって、こんどはぼくが目をパチクリさせた。七十一さいのじいちゃんが、字のれんしゅうちょうをかったとにこにこしながら見せてくれたからだ。そして、しんけんなかおでいった。
「そおくんには、まけないぞ。」
ぼくもじいちゃんにはまけないぞ。