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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2017年度 第53回 受賞作品

福岡県教育委員会賞

祖母の言葉

福岡市立  田島小学校6年山本 真緒

「真緒ちゃん、あとぜきしとってね。」

と祖母が言った。

「あとぜき?。」

部屋を移動しながら、私は頭の中で考えた。今まですわっていた席をきれいにすることかな、それとも席をとっておいてほしいということかな。しばらくなやみ、母に聞いてみた。

「あとぜきというのはね、開けたドアをきちんと閉めるとい うことよ。」

「へえ。」相変わらず祖母の言葉は難しいなと心の中でつぶやいた。

 お正月は、親せきが祖父母の家に集まる。みんなで食事をしていると、意味の分からない言葉が次々と私の頭に飛びかかってくる。けれど、久しぶりに会う祖母を喜ばせたかったから、一応うなずいておいた。祖母たちの話す言葉はほとんど八代の方言のようだ。私は毎年聞いているけれど、理解できない言葉が多い。

 今年のお正月に初めてやって来た親せきの人は、東京の方で、八代弁満さいの会話をニコニコしながら聞いていたけれど、ほとんど意味が分からなかったそうだ。私は仲間がいると思ったらうれしくなった。

 福岡に帰り、八代弁についてパソコンや本で調べてみた。すると、たくさんの方言が出てきて、おどろいた。一つ一つ見ていくと、「たいぎゃ」や「みぞがる」などがあり、祖父母の会話を思い出し、なつかしくなった。中には、ふだん私たちが使っている言葉と意味は同じなのに、方言の発音だけみると、どういう意味かさっぱり分からない。例えば、「お腹がへる」ことを「ひもしか」と言う。

「やっぱり難しいな。」

私はため息をつきながらつぶやいた。

 そんな私も、前に住んでいた長崎の方言を使うことがある。「?だから」を「?やけんさ」と無意識に話してしまうので、友達に不思議な顔をされたことがある。その時はあまり気に留めなかったけれど、もしかしたら相手は意味が分かっていなかったのかも知れない。

 相手のことを考えると、標準語を使う方がいいのかもしれないけれど、方言というのは、その地域の人たちの個性を出していると私は思う。だから、少しずつ、そして、たくさんの方言を知り、それらを使ってもっともっと親せきのみんなとワイワイ楽しく話をしたい。できれば、私からも福岡の方言を教えられるようになりたい。

 祖母の言葉は私にとって宇宙語だけど、祖母と心のきょりをもっと縮めたいと思い、

「おばあちゃん、あとぜきしたよ。」

と、祖母に向かって言ったら、

「ありがとう。」

と笑顔で答えてくれた。

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