2017年度 第53回 受賞作品
福岡県教育委員会賞
おじいちゃんの料理
福岡市立 玉川小学校4年東 佑真
「これ、じいちゃんがつくったけん、食べてみ。」
と、言いながら、ゆであがった落花生のからをパリッとわってくれた。
ぼくには、熊本にすんでいるおじいちゃんがいる。あまり足を思うように動かすことができず、いすにすわったままですごすことが多い。ごはんをいっしょに食べるときや、話をするときもいすから動くことはほとんどない。外出するときは、車いすをおしてもらっている。
そんなおじいちゃんは、いつも決まって自分が畑でつくった野菜を使った料理を、お手せいの焼き皿にのせて出してくれる。先日は、自分でひいたそばを食べさせてくれた。
「石うすをこうして回すと、そば粉が出てくるとよ。」
と、得意げな様子でゴロゴロと使いこんだような石うすを、ゆっくりと力いっぱい回していた。そばをすすりながら、
「足を動かすことも大変なのに、どうしていろいろなことを 自分でするのか。」
と、ふと気になった。
ある日、学校のじゅ業でしょうがいをもつ方が通うしせつを見学した。箱を組み立てている方や、パソコンの画面に向かい、マウスをゆっくり動かしている方のすがたを見ていると、
「この方がたは、しょう来、自分がつきたい仕事につくため の練習をしています。」
と、しせつの方が説明をしてくれた。
そのとき、おじいちゃんのすがたが目にうかんだ。足を動かすのがやっとでも、まだまだ自由に動かすことのできる手で、料理や生活に使う物をつくっている。それは、つまり体が動かないからといってあきらめるのではなく、力をふりしぼっていろんなことにちょう戦し、自分のできることをふやそうとしているということなのだ。
年末、おじいちゃんの家に帰れなかったぼくは、おじいちゃんと電話で話をした。
「また遊びにおいで。」
と、いつもの明るい声がきこえてきた。しぜんとおじいちゃんが料理をするすがたが目にうかんだ。