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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2025年度 第61回 受賞作品

RKB毎日放送賞

鉄骨の上に立つ父の背中

私立  飯塚日新館中学校1年大野 輝壱

 僕の父は鉄骨業界で働いている。鉄骨と聞くと、ただの金属のかたまりのように思えるかもしれない。だがその鉄骨一本一本の上には父の汗と覚悟が積み重なっている。
 父の一日の始まりはとても早い。外がまだ暗く、目覚まし時計の音さえ鳴っていない時間に父は起きる。僕が布団の中で夢を見ているころ、父は仕事の準備をし、静かに家を出て行く。その背中を見るたびに、「今日も始まったんだ」と思う。正直、前はそれが当たり前だと思っていた。しかし、今は、その早起き一つにも、仕事への強い責任を感じる。
 父は休日でも仕事に行く。日曜日や祝日、家族で過ごせるはずの日でも現場があれば迷わず働く。以前は「どうして休まないんだろう」と思ったこともあった。でも父は、「仕事があるのはありがたいことだ。」と言う。その言葉を聞いたとき、働くことを当たり前に引き受ける姿勢こそが、父の強さなのだと気づいた。
 父はどんな仕事でも、承れるものなら何でもする。条件が厳しくても、他の人が避けるような仕事でも、簡単に断らない。その姿を見て、仕事を選ばないということは、自分自身に責任をもつことなのだと思った。逃げずに引き受ける父はすごいと思う。
 鉄骨の仕事は高所での作業が多く、常に危険と隣り合わせだ。高い場所での作業は、ほんの少しの油断が大きな事故につながる。父が「今日は高いところだった。」と何気なく言うとき、僕は言葉にしない不安を感じる。それでも父は、「無事に終わった。」と静かに言う。その一言に、父が命をかけて働いている現実を感じる。
 さらに父の仕事は、暑さや寒さも関係ない。夏の強い日ざしの下でも、冬の冷たい風の中でも、外で働く。汗にまみれ、体が冷え切っても、父は弱音を吐くことはない。帰宅した父の作業服や疲れた表情を見るたびに、仕事の重さを実感する。
 鉄骨は建物の骨となり、土台となる部分だ。目立たないが、鉄骨という存在がなければ建物は成り立たない。父たちがしっかりと仕事をしてくれているから、僕たちは安心して学校に通い、生活できている。街で高い建物を見ると、僕は自然と父の姿と重ねるようになった。
 ぼくは今中学一年生。中学生になってから勉強にこれまで以上に真剣に向き合うようになった。きっかけは、自分の将来の夢について考えたときに、ただ何となく毎日を過ごすのではなく、はっきりとした目標をもちたいと思ったからだ。
 僕の今の目標は、高校入試で難関私立の高校に合格することである。この学校は、学力だけでなく、自ら考え、努力し続ける力を大切にしていると知り、「ここで学びたい」と強く思うようになった。そのために、授業を一つ一つ大切にし、分からないところはそのままにせず、納得できるまで考えるように心がけている。思うように結果が出ない日もあるが、続けることが大切だと自分に言い聞かせ、毎日机に向かっている。
 僕の将来の夢は外科医になることだ。手術という大きな責任を伴う仕事を通して、人の命を救い、誰かの人生を支える存在になりたいと考えている。患者さんやその家族の不安を少しでも取り除ける外科医になるためには、強い意志と確かな知識が必要だ。その第一歩が、今の勉強だと思っている。
 夢への道のりは決して楽ではないが、目標であるからこそ努力を続けることができる。これからも自分の可能性を信じ、困難から逃げることなく挑戦し続けて行きたい。
 父と一緒に過ごす中で、僕は「働く」ということの意味を考えるようになった。それは楽をすることでも、自分のためだけにすることでもない。誰かの生活を支え、社会を成り立たせるために、自分の力を使うことなのだ。
 朝が早く、休日もなく、危険で、暑さ寒さにも耐える父。その姿は、僕にとって何よりの教科書だ。僕は将来、医者になりたいと思っている。父とは違う道を歩んで行くが、父の行動や気持ちは、たとえ医者になれなくて違う仕事に就こうとも必ず受け継いで、どんな困難な壁があっても逃げずにその壁を越えていけるようになりたい。鉄骨の上に立つ父の背中は、これからも僕の進む道を照らしてくれるだろう。

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