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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2023年度 第59回 受賞作品

RKB毎日放送賞

体は疲れたけれど、心は満たされて

筑前町立  三輪中学校3年西依 優太

 僕は、夏休みの間に災害ボランティアに参加し、被災した家の復興の手伝いをしました。七月十日に発生した豪雨により、久留米市の田主丸や善導寺、朝倉市の杷木など広範囲にわたって被害を受けていました。被災した家の中は一階の玄関、床下に土砂が埋まりました。
 今年、七月十日の豪雨の後も、母は、ボランティアに行きました。母は、仕事の知人の方と六年前の朝倉豪雨のときもボランティアに参加しました。何度もボランティアに行く母の姿を見ていたら、僕も何とかしたいという気持ちが生まれました。
 母は、今まで十回以上、ボランティアに参加しています。母のその姿に、人間としての力強さを僕は感じました。たくましさを感じました。そして、憧れもあります。母のように、自ら人のためになることのできる人になりたいと感じました。母の後ろ姿が僕に教えてくれたものは大きいです。
 この夏、毎週、母が災害ボランティアに行っていて、帰ってくるたびに被災した人がどんなふうに困っているのか、それに対して、どんなボランティアをしているのかを聞いているうちに、僕はとにかく人手が必要だと感じました。そして、一人でも多くの人がボランティアに参加したほうがよいと考えるようになりました。そこで、僕も母と、災害ボランティアに行くことにしました。
 ボランティアに行く前の手続きが必要でした。手続きには父と行きました。
 初めて参加するボランティアの当日は十九人のチームで、被災した家の土砂掻きをしました。十九人の中には、愛媛からや鳥取から来られた人、県内では北九州などから来られている人も少なくありませんでした。七十代の高齢のボランティアの方もいらっしゃいました。このボランティアには兄も参加しました。僕たちは、庭にたまった泥をスコップで掻きだして、土嚢袋に入れる作業を一日中繰り返しました。その日の気温も、四十度近くありました。とても暑く、土砂は硬くて、重くて、何度掘っても終わりが見えません。それでも、ボランティアの人たちで励まし合いながら、作業を進めました。
 被害にあわれた方の家は、ひどい状態でした。家具やTVには泥がびっしりへばりついています。畳は浸水して水を吸ってしまっているので使えません。
 僕は、水害にあわれた家の状態を初めて自分の目で見ました。見た瞬間、こんなひどい状況を、僕たちの力で、どのくらい元に戻せるだろうかと、気持ちが暗くなりました。でも、ボランティアに参加した方たちは、明るく仕事に向かわれていました。その姿が印象深く心に焼きついています。一つ一つが僕にとって新鮮な体験となりました。
 一日が終わるころには、完全復旧とまではいかなくても、もとの土砂のない姿を取り戻していきました。もちろん、被害にあわれた家主さんも、一緒に仕事をされました。ボランティアの人たちと一緒に作業をしていた家主さんは、「みなさんに、こんなにしてもらってうれしい。」と言われました。
 四十代くらいの女性の家主さんが泣いてお礼を言われました。もう一人の家主さんは、七十代ぐらいの女の方でした。被害直後に女の方二人だけで、この被害にあった状態を直すことはとてつもないことだと思います。どこから手を付けたらよいかわからない。手を付ける前に、一日でこんな状態になるなんて、信じられなくて、気持ちも重苦しかったことだと思います。だから、僕たちボランティアが来たことは、家主さんたちをどんなに慰めたことだろうと思いました。
 僕は今回のことを通して、大切なことを学びました。家の中や庭の土砂掻きは、重機が入れないので、人の手で作業するしかありません。だから、一人でも多く、ボランティアに参加することが大切なのだと思います。それは、泥のついた家具や日用品を元に戻すことだけではありません。こんな状態の中で心が折れかけている方の気持ちを少しでも明るいほうに変えていくことができます。
 この体験を通して、僕は今まで見ていた自分の世界が変わりました。僕の見ていた世界の奥にもう一つ深い世界がありました。今まで、助け合いは大切なのだと、頭でわかっていたけれど、本気ではなかった自分にも気づきました。
 汗びっしょりになりながら、他の人とボランティアをしたことで、人間同士が、こうして現実に助け合っているのだという実感をもてました。
 僕は、この水害の現場を見たとき、僕に何ができるだろうかという戸惑いもありました。けれど、こうした皆さんたちと、土砂掻きの仕事をして、汗を流したとき、何ものにも代えがたいものを学んだ気がします。
 何かしなければという自分の思いを行動に移せてよかったです。こうした、一つ一つの体験は、人間としての僕の世界を広げてくれました。
 「体は疲れたけれど、心は満たされているね。」
今日一日の仕事が終わり、帰路についたとき母が口にした言葉です。兄と僕は大きくうなずきました。

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