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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2016年度 第52回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

お盆と祖母と私

うきは市  浮羽中学校3年桜木 麻菜美

 今日は、お盆です。ご先祖様をむかえに行きます。八月の初め、とても暑い時期なので朝早くから行くことになりました。その前に迎え団子を作らなければなりません。

「団子粉取って。」

午前六時、迎え団子を作りはじめます。団子粉と白玉粉をまぜて、水を入れてひたすらこねてこねて、ふと思いました。おととしまでは、祖母と一緒に作っていたな、と。祖母はおととし他界しました。今日は、祖母も帰ってくると思うと、とても嬉しくて、少し悲しくなりました。まだ私は、祖母がいなくなった実感がうすいなと思いました。

 さて、よくこねることができて、ほどよいかたさになったので、形を整えていきます。迎え団子は座布団のように、平べったくします。丸くころがして、指で真ん中を押してできます。これは祖母に習ったことです。祖母がいないお盆は、二回目。初めての祖母がいないお盆は、とてもあわてました。

 ふっとうしたお湯に団子を入れて、浮かんできたらすくう作業を続けていると

「仏だんに供える団子は、きなことか、あんこつけてたっけ。」

と、母が私にたずねてきました。私は、一生懸命に記憶をたどりましたが、

「きなこつけていたような、つけてなかったような。」

とても曖昧な記憶でした。こんなとき、祖母がいたらな、と思うことがあります。母が、インターネットで調べてみると、それぞれの地方でちがうことが分かって、結局、いとこに聞きました。

 きなこに砂糖と少しの塩を加えて、団子を入れて、できあがったばかりの団子を、朝食として食べて、午前八時頃家を出ました。祖母が、今日帰ってくることを楽しみに思いながら。

「ただいま。」

お寺は、とても暑かったです。特に納骨堂。風があまりなく暑かったです。極楽なわが家に着いて一息つく間もなく困ったことになりました。仏様にお供えする精進料理です。

「あれっ、これがごはんを入れるお皿で、これがふただよね。えっ、これは、ふた、それともお皿。」

いろいろお皿やらふたやらありすぎて、てんてこ舞いでした。祖母は、どうしていただろうかと、やはり思いました。考えても、考えても思い出せないので、仕方なく、これもいとこに聞いたり調べたりしました。

 こんな感じで、慌ただしく日は過ぎていきお盆最終日、今回は、送り団子を作ります。送り団子は、丸くした団子を、両端から軽くつまんで作ります。これは、ご先祖様が帰るときに背負いやすいように、俵型にするためだと、祖母が言っていました。祖母との思い出にひたりながら、作って、

「こんなことしていたな。」

と、規定の形ではない、ハートや星、ドーナツ型の形を作ってみました。なつかしいなと思っていると、そのとき遊びにきていた、いとこの五才と三才の兄弟が、私を見て、団子を作りたいと言ってきました。私は、

「手、洗って来て。」

と言って、ふと、思いました。私、今、教える側になってるんだと。今まで、祖母は孫の中で最年長の私に、いろいろ教えてくれました。ときには、私が面倒くさがって、よく怒られながら、叩き込まれました。それはこうやって、下の子たちに、私から教えられるようにすることで、孫にあたるみんなに、祖母のいなくなった空白を感じさせないため、孫のみんなに平等に、知恵を教えるためだと私は思いました。

 みんなの団子は、上手にできました。私は祖母に習った、俵型の意味を教えながら、団子を作って、一緒に食べました。とてもおいしかったです。

 私は、祖母がいなくなったことを認めることが恐くて、祖母のことを忘れることが恐くて思い出すことから逃げていました。祖母がいなくなって約三年、いまだに祖母がいない実感は、ありません。でも、時間をかけて、ゆっくり受け止めたいです。そして、祖母のことを忘れないように、思い出して、祖母のことを、小さすぎて、まだ分からなかった、年少のいとこに、祖母の人物像や、習った知恵を教えたいと思いました。

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