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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2022年度 第58回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

猫かぶり

福津市立  福間中学校3年西川 陶子

「なんか変わったよね。」
 三年生になってしばらくして、去年からの友達に言われた。性格のことだろう。
 本当のことを言うと、私は中学生になったときに、小学生のときから性格が変わっていた。「変わった」というよりは、「元気だった」のが「すごく大人しくなった」と言う方が妥当だと思う。
 私は中学校に上がると同時に北海道から福岡に転校した。知り合いも友達も、一人もいない。ここで今までのように元気にはしゃいだり、ふざけたりすると浮いてしまうと思った。単純に不安もあったので、私は猫をかぶることにした。いつも大人しくて、ずっとにこにこと笑っているいい子ちゃん。これが私のつくった新しい性格。おかげでみんな親切にしてくれたり、気をつかってくれたりした。仲の良い友達も二人できた。移動教室や自由班のときはいつもその三人でいた。
 でも、楽しくなかった。二人がふざけ合っているのがうらやましかった。私も面白いことを言おうと思ったけれど、「いい子」という性格が壊れるのがこわくて、言えなかった。だからやっぱり、本当に仲がいいというよりは、二人のグループに私はおまけという感じが否めなかった。何回かだじゃれなどを言ってみたこともあるけれど、笑うというより驚かれてしまった。「寒っ!」と言ってほしかったが、それも仕方がなかった。
  「北海道に戻りたい」「今転校していなかったらもっと楽しかっただろうな」と思うことも何度もあった。それと同時に親友がいることの貴重さやありがたさも痛感した。
 転校は仕方のないことだから、受け入れて前に進まなければいけない。私は、本当の自分を出したいと思った。「いい子」でいるのが窮屈に感じた。このまま猫をかぶっていても、気が置けない存在や親友と呼べる人はできないだろう。だけどやっぱり、なかなかその殻を破ることはできなかった。
 三年生になってクラス替えがあった。私は誰かに声をかけようと思った。少しためらったけれど、掃除時間に一人でいた女の子に思い切って声をかけた。掃除の間話しただけだけれど、その子はすぐ面白いことを言ったりツッコミをしたりしてくれた。私はそれがとても嬉しかった。気をつかいながら話すよりも、ときどきズバッとしたことも言った方が楽しいのだとわかった。私もふざけたり笑ったりして、いつの間にか親友になっていた。夏休みも、オープンキャンパスやプールに一緒に行って、友達と過ごす楽しさを改めて実感することができた。
 それから私は、クラスでも明るく振る舞うことができるようになった。友達もたくさん話しかけてくれるし、私からもたくさん遊びに誘うようになった。自分に自信が持てるようにもなった。「いい子」としていろいろ我慢し自分を隠すより、自分を出した方がずっといいと思った。くだらないことを言い合ったり、コンビニエンスストアでジュースを買ったり、そういう些細なことがとても楽しくて、毎日が充実している。愛想笑いでなく、心から笑えたのはいつぶりだろう。最近は家にいるよりも学校にいる方が好きになり、運動会や文化祭などの学校行事も人一倍楽しめるようになったと感じる。二年生の時からの友達にも、
「意外だったけれど、最初からそのぐらい面白くしてくれればよかったのに。」
と言われた。
 私は、友達をつくるためには自分を隠しておく方がいいと思っていた。だけど、それは正反対なのだということがわかった。自分らしくいることは、こんなにいいことなんだとわかった。それに、自分を隠してしまう自分はただ弱いだけで、他人との衝突から逃げているだけなのだということにも気が付いた。
 意見が違うことは当たり前で解決すればいいだけ。ただそれだけのことに、私は怯えていたのだ。
 きっと日本中にも、私のように自分を押し殺している人達がたくさんいるだろう。それが協調性であると思っている人も多いかもしれない。でもそれは違う。意見や得意なこと、価値観は人それぞれ違っても、それをどれか一つに統一して他のものを隠してしまうのではなく、それぞれが関係し合うことでまとまりにしていくことが大切なのだ。
 私が中学校生活を通して得た一番大きな学び、「自分らしさを捨ててはいけない」ということをこれから社会に出ても忘れないようにしたいと思う。
 みなさんは、「自分らしく」生きていますか。

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