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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2021年度 第57回 受賞作品

西日本新聞社賞

人の心の中に残る人になりたい

志免町立  志免東中学校1年吹本 麗華

 生まれてきた人はいつか必ず死を迎える。そのとき、自分の生きた証として残るのは、人の心の中である。
 二〇二〇年二月十七日、ひいじいちゃんが亡くなった。悲しむ間もなく、淡々と事は進んでいった。
 お通夜の後、「ひいじいちゃんの顔を見ておいで。」と話す大人たちに戸惑いながら、棺桶に足を向けた。
 私がひいじいちゃんに最後に会ったのは、亡くなる前日。ひいじいちゃんが病気とわかり入院してから、毎日欠かさず病院に通っていたひいばあちゃんが唯一病院に行けなかった日。体調がよくないひいばあちゃんに代わり、私たち家族と祖母で、朝から面会時間ギリギリまでひいじいちゃんの傍にいることにした。これは、寂しがり屋のひいじいちゃんのため。そして、心配性のひいばあちゃんのため。二人が安心して一日を過ごせるようにと。病院には広いキッズルームが完備されていたが、私は退屈だった。「ひいばあちゃんが来られないからって、一日中傍にいなくても。」そんな私をよそに、元気いっぱいの妹と弟。どんな時でもどんな場所でも、目一杯遊び楽しめる二人が羨ましいぐらいだ。
 ひいじいちゃんは、喉の手術をしていて喋れなくなっていた。だから会話は、ホワイトボードでしていた。ホワイトボードに書き出される言葉は、ほとんどひいばあちゃんのこと。「ばあちゃん大丈夫?明日は来る?」ひいじいちゃんにとって、ひいばあちゃんは大切な人。同じように、ひいばあちゃんにとっても、ひいじいちゃんは大切な人。
 面会時間終了が迫る頃、祖母と母が病院に残り、父と私たちがひいばあちゃん家に行って、二人にテレビ電話をさせてあげることにした。初めてのテレビ電話。言葉は交わせないが、画面越しに映るひいじいちゃんの満面の笑みで、隣にいるひいばあちゃんもまた嬉しそうだった。二人に言葉なんていらないのだ。
 面会時間が終わり、ひいばあちゃん家に祖母と母が来て、一緒に夜ご飯を食べて帰るとき、ひいばあちゃんが「今日はありがとうね。本当にありがとう。」と言った。あんなに一日退屈で憂鬱だった気分が一気に晴れた。単純に嬉しかった。今日は良い一日だったな。そう思った。
 そんな日を懐かしく思い出しながら、棺桶の前で立ち尽くす。深呼吸をして、一歩前に出て、ひいじいちゃんを見た。私の目の前にいるひいじいちゃんは眠っているわけではない。血色の悪い顔。不自然な目のとじ方や口。明らかに亡くなっているのがわかる。私はすぐに傍を離れた。言葉が出なかった。何も出なかった。ただ涙が頬をつたった。「安らかに眠っているね。ひいじいちゃんは幸せ者だね。」親戚のおばさんが言った言葉に疑問をもった。ひいじいちゃんは幸せ者?亡くなってるのに?私にはわからなかった。
 次の日、お葬式があった。父や祖父、親戚の男の人たちで棺桶を持ち、霊柩車に乗せるとき、今までにないくらい私は泣いた。母も。祖母も。親戚の人たちも。何かを吐き出すかのように、思いっきり泣いた。でも、ひいばあちゃんだけは、しっかりと前を向いていた。
 火葬が終わり、ひいじいちゃんは骨になった。順番に骨を壺のようなものに入れた。私も入れた。泣きすぎたのか?非現実のようなことが起きていて戸惑っているのか?このときは、涙は出なかった。
 あれからもうすぐ二年が経とうとしている。この二年間でいろいろなことが起きた。病室のテレビで映し出されていた、武漢から報じられた新型コロナウイルスのニュースは、当時まだ他人事のように感じていたが、日本でもたくさんの人が感染し、たくさんの人が亡くなった。それだけではない。頻繁に起きている交通事故、災害。そして、人が人を殺めるなど、胸が痛む出来事が日々起きている。はたまた、新しい命が日々誕生しているのも事実。いつも人は、生と死の狭間に立たされているように感じる。
 ひいじいちゃんの死後、私たち家族の会話の中でひいじいちゃんの話題が増えた。私自身も何気ない日常で、ひいじいちゃんのことを思い出すことが多々ある。そして、生と死についてもいろいろ感じ、考えることが増えた。なぜ人は生まれ、なぜ死ぬのか?人は死んだら終わりなのか?そうした疑問の中で、私は、人は人の心の中に残り、人の心の中で生き続ける。そう思った。現に、ひいじいちゃんはこの世に存在しないが、私の心の中にいる。私だけではない。ひいばあちゃんや祖母や母。たくさんの人の心の中で生き続けている。これが、お通夜の時に親戚のおばさんが言った「幸せ者」の意味なのではないか?と思っている。亡くなって終わりではない。いつまでもたくさんの人の心に刻まれている。いつか死を迎えたとき、私もそうなりたい。いつまでも私が生きた証として、誰かの心に存在していたい。そのために、今を精一杯生きたい。人との関わりを大切にし、一瞬一瞬の時間を大切にし、日々過ごしていきたい。人の心の中に残る人になりたいから。

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