2021年度 第57回 受賞作品
西日本新聞社賞
とめけん
福岡市立 舞松原小学校3年喜屋武 舞子
ザクッと音がなったらせいこうです。カッと木と木がぶつかる音はしっぱいです。わたしは今けん玉にむ中です。けん玉のけん先に玉を入れることを「とめけん」といいます。お父さんはとめけんが上手です。ふわっと玉がとんで、まるでじ石がひきよせられるようにザクッとけん先にささります。
さいしょからとめけんはむずかしいと思ったので、大皿、小皿、中皿の練習をしました。一か月くらいでかんたんにできるようになりました。でも、とめけんは、そうはいきません。お父さんにお手本を見せてもらいました。けん玉をたてに持って玉をいきおいよく回します。ひざを曲げて、糸がまっすぐになったしゅんかんに、シャッとひざをのばし、同時に玉を持ち上げてすくうようにけん先にさします。ザクッと音がして玉がささります。同じようにしても十回れんぞくでしっぱいして、
「あー、もうぜんぜんできん。」
とわたしはおこりました。
玉がカッカッとなってはじき返されます。あきらめかけていたその時、ザクッとあの音がしました。思わずはっと息をのみました。わたしはけん玉を持ったままバンザイして、
「みなさーん、見てー。」
とさけびました。お母さんと弟がかけよってきて、かん声があがりました。一番見てほしかったお父さんはまさかの入よく中でした。ささったままのけん玉を持って、とぶようにおふろ場に走り、とびらをバーンと開けて大きく息をすいこみ、
「見ーてー。」
とおなかからさけびました。
お父さんの
「おめでとう。」
がおふろにひびきわたりました。