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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

日本農業新聞賞

お兄ちゃんからの贈り物

私立  福岡雙葉小学校4年齋藤 奎音

「ふうちゃんに、お別れをして。」
 お母さんが、私を呼びました。
とうとうその時が来たんだ。私は胸がぎゅうっとしめつけられました。
 ふわふわなクリーム色の毛に金色の瞳、真ん丸顔の猫のふうちゃんは、私が生まれた時からいつも一緒です。
 私が泣いていると、すぐに走ってきて顔にすりすりしてなぐさめてくれます。勉強中は、手を丸めてノートの横に座り、じっと見守っています。夜は一緒に寝てくれるので安心します。一人っ子の私にとって、優しいお兄ちゃんのような存在で、これからもずっと一緒だと信じていました。
 その日は突然やってきました。
 いつものように学校から帰ると、毎日玄関で出迎えてくれる姿がありません。急いで部屋にかけこむと、ベッドの上で動けなくなっていました。トイレに行きたくても歩けない。大好きなご飯も食べられない。私は悲しくて隣に寄りそいました。ふうちゃんは苦しそうなのに、泣いている私の頬を、しっぽでずっとなでてくれました。
 お別れの時、抱きしめながら何度も何度も呼びかけました。
「ふうちゃん。ずっと大好きだよ。きっと帰ってきてね。ありがとう。」
 最後まで優しい目で私の顔を見つめながら天国へ行ってしまいました。
 私の心には、ぽっかり大きな穴が開いています。一緒に遊んだおもちゃが目に入るたびに、涙があふれます。
 写真を眺めながら思い出していると、大切なことに気がつきました。
 それは、ふうちゃんのように、どんな時も相手への優しさを忘れてはいけないということ。そしてもうひとつ。
 今までの私は「明日やればいいや。」「後にしよう。」と考えていました。でも明日には、今当たり前の毎日がなくなってしまうかもしれません。一日一日を後悔しないように生きること。
 最後までお兄ちゃんらしく、とても大切なことを教えてくれたふうちゃん。
「がんばってるね。えらいね。」
と、いつか言ってもらえるように、私はこれから一生けん命がんばるね。
 ありがとう。また会おうね。

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