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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

むだにはならない

春日市立  春日小学校6年日隈 一歩

「努力は時に人を裏切る。でも、むだにはならない。」これは、青森山田大学のマラソン選手の言葉だ。一年前、マラソン後にこの言葉を口にしているのをテレビで聞いた。
 ぼくはこの言葉を、聞いた時からずっと大切にしている。理由は、次のような出来事があったからだ。
 一年前、ぼくはいつもの日課で、動画でサッカーのスーパープレー集を見ていた。難しい技が多い中、自分でもやってみたいと思う技が二つあった。早速、公園に行っていつものように自主練習をした後、その技をしようとした。が、全然できない。すぐに足がからまり、思うようにボールを動かすことができないのだ。何回も続けてしてみた。よく言うじゃないか、「失敗は成功のもと」だって。しかし現実はそんなにあまくなかった。次の日も、その次の日も、何度も練習をしたが、結果は同じだった。ぼくの頭の中はこのことでいっぱいになり、日が重なるごとに家族との会話も減っていった。父と母に「大じょうぶ。」と声をかけられたこともあった。
 ある日、ぼくは、もう一度動画を見て、動きをできるだけ真似してみた。それを何回もくり返していると、ついに成功した。とてもうれしかった。どこか気が楽になった気がして、家族との会話も増えた。最高の一日だった。が、後日、再びぼくはどん底へたたき落とされることになる。
 技が成功した次の日、ぼくはサッカーの試合へ向かった。練習の成果を発揮するいいチャンスだと、心がおどった。試合は二対一で順調だった。しかし、後半の終了直前、ぼくは練習したあの技に失敗し、相手にボールをうばわれた。チームメイトがボールをうばい返してくれたけれど、あやうく自分のせいで失点するところだった。くやしさと悲しさで胸がいっぱいになった。「練習はむだだった、どうせ練習したってまた失敗する。」そう思って、練習をしなくなった。
 あの言葉に出会ったのは、そんな時だった。テレビでマラソン大会をたまたま見ていたぼくは、「努力は時に人を裏切る。でも、むだにはならない。」という言葉を聞いた。これは、人は一生けん命練習してもいい結果が出せないときがある。しかしその努力がむだになったわけではない。これからにつながるという意味だ。この言葉は、暗くしずんでいたぼくの心を明るく照らしてくれた。そして、もう一度挑戦する勇気をもらい、練習を再開した。
 数日後。ついにぼくは、試合で技を成功させ、点を決めた。ガッツポーズをしたぼくはマラソン選手の言葉を思い出し、それが本当だったと実感した。
 人間だから、もちろん失敗する。大事なのは、それをどうとらえるかだ。むだだと思うか、あきらめず努力を重ねるか。もちろんぼくは、努力を重ねる。なぜって、ぼくの座右の銘は「努力は時に人を裏切る。でも、むだにはならない」だからだ。

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