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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2020年度 第56回 受賞作品

全共連福岡県本部運営委員会会長賞

見ていてね

国立大学法人  福岡教育大学附属福岡小学校5年松井 美澪

「 おぉ、美澪元気か。」
おじいちゃんがけい帯電話の中からにこにこして手を振ってくれています。おじいちゃんはよくビデオ電話をしてくれます。おじいちゃんの元気そうな姿をみると、わたしも元気になれます。おじいちゃんとわたしは誕生日が近いので、毎年一緒にお祝いをします。いつもおじいちゃんのひざの上に座って、ろうそくの火を吹き消していました。おじいちゃんは大きくて優しくていつもわたしのことを支えてくれます。将来の夢を話した時も、
「美澪なら絶対になれる。がんばれ。」
と応援してくれました。学校のことや、習い事の話をすると、いつもにこにこして大きな手で頭をなでながらほめてくれました。
「おじいちゃんが危ないので来てください。」
朝、突然電話がありました。急いで準備をして家を出ました。コロナウイルス感染予防のため施設での面会が禁止になっていました。しばらく会えていなかったけれど、おじいちゃんは元気だと信じていたのに。おじいちゃんに早く会いたくてたまりませんでした。
 久しぶりに会ったおじいちゃんはとてもきつそうでした。家族も口々に、
「おじいちゃん来たよ。大丈夫。苦しいね。」
と声をかけていました。わたしは何て言っていいのか言葉がすぐに浮かびませんでした。おじいちゃんは、はあはあと苦しそうに息をしていて話せません。
「美澪、こっちに来て顔を見せてあげて。」
と、お母さんに言われて、おじいちゃんのそばに行きました。
「おじいちゃん、美澪だよ。」
と、声をかけると、目を動かしてわたしを見て少しうなずきました。そして、わたしのことをずっと見てくれていました。その時、わたしは、涙が出てきそうでした。
 おじいちゃんに久しぶりに会えたその日の夜、おじいちゃんは亡くなりました。家族もいとこも、みんな泣いていました。身近な人が亡くなってしまうのは、この時が初めてでした。あんなにも、わたし達に元気をくれたり、優しくしてくれたおじいちゃんが亡くなるなんて、びっくりして悲しくてわけが分からなくなるくらい泣きました。
 とうとう、おじいちゃんと最後のお別れの時が来てしまいました。眠っているようなおじいちゃんに手を合わせました。おじいちゃんの元気な姿や亡くなる前の姿が頭に浮かび上がってきました。目が涙でいっぱいになりました。もう会えないと思うと、さびしくてたまりません。でも、わたしがいつまでも悲しんでいたら、優しいおじいちゃんは心配して天国にいけないかもしれない、今度はわたしががんばらないと、と思いました。涙を拭って、「おじいちゃん、わたしは大丈夫だよ。天国から見守っていてね。」と、心の中で、きちんとお別れを言うことができました。
 おじいちゃんと直接会って話すことはできなくなってしまったけれど、心の中ではずっと話ができます。おじいちゃんがいつも側にいてくれる気がします。おじいちゃんが応援してくれていた夢が叶えられるようこれからもがんばります。見ていてね、おじいちゃん。

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