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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2018年度 第54回 受賞作品

西日本新聞社賞

音のちがうクラッカー

福岡市立  金山小学校5年中田 みのり

「次、だれがならす。」
「先にいいよ。」
「え、そう。あ、ありがとう。」
パンッと大きな音でクラッカーが鳴り、二年ぶりのパーティーは、ぎこちない空気で始まった。
「何か、学校ではやっているものとかある。」
と、話題を出してくれた人もいたけれど、会話が続かない。予想通りの展開だった。
「ふふ、静かだね。」
しん、とした空気の中、私たち四人は少し笑った。
 幼ち園のころから仲良しの私たちは、小学校がばらばらでふだんはなかなか会えない。だから毎年、年に一度のクリスマス会で会えるのを楽しみにしていた。学年が上がるにつれ、時間を合わせるのがむずかしくなってきている中で、今年は久しぶりに、全員集まることができた。四人で集まれるのはとても楽しみだったけれど、いざ当日になると、「前みたいに楽しめるかな。」と少し不安にもなっていた。朝の買い出しで思いついて、少しでもパーティーがもり上がるようにと、買い物かごにそっとクラッカーを入れたのだった。
 二年ぶりに会った友だちは、顔も声も少し変わっているようだった。クラッカーでスタートしたあと、ゲームをしたり、外で遊んだりするうちに、だんだん打ちとけて、あのころの四人組にもどっていった。だれかが、
「しょう来の夢とかある。」
と、聞いた。
「私は、絵をかくのが好きだから美術の大学に行きたいな。」
「私はあの高校に行きたいから勉強がんばってるよ。」
いつのまにか、「お姫様になりたい。」と言っていた友だちの夢は、しっかりとした夢に変わっていた。自分の目標に向かって努力している友だちが少し大人っぽく見えた。私は、みんなの目にはどう見えたのだろう。大好きな三人に負けないように、夢に向かってがんばっている自分でありたいと思った。
 にぎやかにみんながもり上がってきたころ、
「そろそろ帰る時間だよ。」
母が私たちをよんだ。楽しい時間はあっという間だ。
「まだ帰りたくないな。」
「あ、クラッカーが残ってるよ。最後にならそうよ。」
「せーの。」
「パパン、パンッ。」
元気な音、やさしい音、おもしろい音、一人一人の音がなった。初めより楽し気に、クラッカーのカラーテープも、高くまったように感じた。

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