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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2017年度 第53回 受賞作品

福岡県知事賞

ぼくのとくべつなそんざい

福岡市立  金山小学校3年田中 ゆいと

「やっちゃん、三月に福井へ引っこすって。」

やっちゃんは、ずっと佐世保にいると思っていたのに。ぼくは何も言わずに日本地図で福井県をいそいでさがした。遠さをはかったら、今の七倍ぐらい遠かった。もう、一年に一回しか会えなくなるらしい。

 ぼくには、同い年のいとこがいる。ぼくの祖父母の家から、五分ぐらいはなれた所に住んでいる。名前は、やっちゃん。たんじょう日は一ヵ月しかかわらないけど、ぼくよりもこぶし一つ分せが高い。野球と習字を習っている、元気な男の子だ。

 ぼくは、やっちゃんがいるから、休みのたびに佐世保に行くのが楽しみでたまらない。ぼくが祖父母の家に行ったその日から、いっしょにねて、いっしょにおふろに入って、いっしょにご飯を食べる。そして、一日中いっしょに遊ぶ。

 生まれて三ヵ月の時、とった写真では、やっちゃんによっかかってねているぼくを、やっちゃんはしっかりささえてくれていた。歩き出すのは、ぼくが早くて、まだゆっくりしか歩けないやっちゃんを、ぼくが後ろからおして笑っているすがたがビデオにのこっている。福岡に帰る日には、まだぜんぜん遊んでないよと、なくのがおきまりだった。

「どんだけ遊んだね。」

と、いつもお母さんたちは笑っていた。

 そして今年、引っこし前さい後のお正月をいっしょにすごした。ひみつきちを作ったり、野球をしたりー。やっぱりとっても幸せな時間だった。帰りは、やっちゃんが駅で見送ってくれた。

「福井に行ってしまうんやね。」

「友だちまだ一人もおらんけどね。」

いつも元気なやっちゃんが小さな声で答えた。ぼくはそのとき、何も言うことができなかった。でも、やっちゃんは不安なんだと感じた。

 友だちでもなく兄弟でもない、とくべつなそんざい。

 三月、ぼくがやっちゃんを見送るときには、何て声をかけようか。

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