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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2016年度 第52回 受賞作品

福岡県知事賞

おばあちゃんの教え

北九州市  福岡教育大学附属小倉小学校6年下 楓花

 今年のお正月。私はおぞうにを一口食べたしゅん間、泣きそうになりました。お母さんの作ったおぞうにが、おばあちゃんの味と全く同じだったからです。

 私のおばあちゃんは六十代とは思えないくらい、おしゃれでかわいい、自まんの人です。そのおばあちゃんがおととしの十一月に背中が痛いと言って、病院に行って検査をすると、すい臓がんと分かりました。おばあちゃんはショックを受けていましたが、すぐに気持ちを切りかえて、抗がん剤治りょうを始めました。髪が抜けてくると、思いきって丸刈り頭にしました。私たちが驚くと、

 「かわいいやろ。すごく楽ちんよ。」

と、明るく言えるようなおばあちゃんを、私はとてもほこらしく思いました。かつらをつけて、毎日のように外に出かけたり、帰ってきて、ぱぱっと、ご飯を作ったり、つらさを私たちには全く見せませんでした。私がお腹がすいたと言うと、野菜たっぷりのぞうすいを作ってくれたり、その他にも煮物や野菜ジュース、お味そ汁など色々な料理を作ってくれたりしました。私が勉強をしていると、

 「ふうか、頑張って中学に行くんよ。」

と、応援してくれました。またわからない問題があると一緒に考えてくれました。

 そんなおばあちゃんが昨年の七月くらいからお腹に水がたまりだし、入退院をくり返すようになりました。水をぬくと、元気もなくなり、あまり話すこともできなくなりました。食べることが好きだったおばあちゃんが、ほとんど食べることもできなくなり、さすがに不安になりました。そんな中でもリハビリをして一日でも早く退院できるように頑張る姿をみて、私は将来、理学療法士になって、病気でリハビリが必要な人の役に立てるようになりたいと強く思いました。おばあちゃんの頑張る姿にたくさんの勇気をもらいました。

「私、将来リハビリの先生になるよ。」

と言うとおばあちゃんが、

「ふうかにぴったりの仕事やね。ばばのリハビリも手伝ってね。」

とうれしそうに言ってくれて、必ず実現させると心に決めました。

 おばあちゃんは昨年の九月に亡くなってしまいました。がんとわかって一年もたっていません。お母さんから亡くなったと聞いたときには信じられませんでした。お姉ちゃんは聞いたしゅん間、泣きくずれました。

 おばあちゃんとは私が生まれてからずっと一緒に住んでいたので、おばあちゃんのいない家は淋しいです。私が泣いても、落ちこんでも、なぐさめてくれる優しいおばあちゃんはもういません。

 お正月、あのおぞうにを食べたしゅん間、まちがいなくおばあちゃんのおぞうにだと思いました。おばあちゃんの存在を感じて、うれしくて私は涙が出そうになったのだと。おばあちゃんの優しい味は、お母さんが引き継いでくれました。そして今度はこの味を引き継ぎます。我が家のおぞうにはあごだしでとる、あっさりした優しい味のおぞうにです。おばあちゃんの教えがある限り、私たちの心の中におばあちゃんは生き続けます。

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