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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2016年度 第52回 受賞作品

福岡県知事賞

忘れていた大切な宝物

福岡市  福岡教育大学附属福岡小学校4年小川 悠花

「いらないと思った物、もう一回見直してごらん。この箱あげ るから、心にピンとくる物あったら入れなさい。」

 年末、わたしは自分の部屋の収納だなの整理をした。ようやく片付け終わったと思った矢先に、不満気な顔をしたお母さんから箱を渡された。ふり出しにもどされた気分で、ため息が出た。

 一つ一つ見直していく作業は大変だと思ったけれど、意外におもしろかった。そんな中で、たばになって置かれた学習ノートが目に入ってきた。片付けるときは気にならなかったノートだったけれど、何だかすごくなつかしい。それは、わたしが幼少期から書き続けてきた絵日記のたばだった。元々、文字を練習するためにとお母さんが始めさせた絵日記は、幼稚園年少の一学期の終業式から始まり、最後は日にちが飛び飛びになりながらも、二年生の運動会くらいまで続いていた。時間に追われていつの間にか書かなくなってしまっていた。

 読み出すと止まらない。初期のころは文字もガタガタで、字を書くだけで精いっぱいだったのが伝わってくる。年長くらいになると、したことに加えて一言気持ちを書き入れている。やる気がない日はぐちゃぐちゃな絵と文字。そうかと思えば、マスからあふれるほどの文でその日の出来事をていねいにつづった日もある。

 読んでいるとお母さんがやってきた。

「お母さんも日記つけてたんよ。三日坊主のお母さんにしては長 く続いたかな。」

ちょうどわたしが絵日記を書き始めるくらいまでつけていた育児日記を見せてくれた。わたしが書いた絵日記とお母さんがつけていた育児日記でわたしの成長の記録が帯のようにつながった。

 日記を読みながら、十才になった今の自分は、たくさんの経験をしながら色んなことを思い、日々を積み重ねてきたんだと感じた。毎日の生活が未来の自分を作っているんだと思う。十年後、二十年後に人生をふり返ったとき、後悔しないよう今を大切に生きていきたい。

「忘れ物、見つかってよかったね。」

お母さんがつぶやいた。わたしは日記を箱に入れて、たなのすみにそっと片付けた。

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