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「JA共済」小・中学生
作文コンクール

2022年度 第58回 受賞作品

福岡県知事賞

恐竜新聞を書く理由

福岡市立  若宮小学校5年照井 優人

「また書いてる。そんなに書いて。」
母のうんざりしたような声が聞こえた。
「新聞ていうのは、みんなが読みたそうなことを書くの。恐竜なんて読まないやろ。」
「なんてことを言うんだ。」ぼくはムッとした。ぼくが新聞を書く理由はそうじゃない。
 今年もクラスの係決めは迷わず新聞係に立候ほした。三年連続新聞係だ。ぼくにはみんなに伝えたいことがある。新聞を書く理由はただひとつ。「恐竜のすばらしさ」をみんなに知ってもらいたい。それだけだ。
 低学年のころはクラスに恐竜好きはたくさんいて、とても楽しかった。でも高学年になると、みんなの興味はスマホやゲームに変わった。信じられないけれど恐竜を、ワニやトカゲといっしょだと思っている人もいる。
 恐竜は、生息かん境に対応して長い年月をかけて体を進化させ、それをまた進化させるをくり返してきた。きょ大な体でも活発に動ける上、知性も高く、群れで社会性を学んでいた。本当にすばらしい生物なんだ。
 恐竜新聞の大きさは、原こう用紙サイズの白い紙で、それにめいっぱい情報をつめこむ。時代ごとに前期中期後期にわけて恐竜を登場させている。三十二人いるクラスで読んでくれているのは五人とたん任の先生くらいだ。
「全然おもしろくない。」
と、言われたこともある。新聞は読む相手のことを想像して書かないと読んでもらえない。
だから、少しでも目をひいて、おもしろそうだと思ってもらえるように四コママンガを書くようにした。マンガを読むついでに恐竜のことも読んでほしいから。他にも一号につき二つの恐竜ミニ知識や新聞のおさらいクイズ、解けたらすごいねクイズを書いて、友達が、「へえー。」とおどろいてくれるような工夫をしている。恐竜のイラストもたくさんの図かんから特ちょうをつかんで、なるべく細かくインパクトのあるものをかいている。
 また、恐竜の知識をつけるために、たん生日もクリスマスプレゼントも恐竜図かんだ。父が休みの日は、博物館で恐竜の骨格を細部まで見たり、山や河原で発くつ作業もしている。新聞の書き方を学ぶために、毎朝ポストから新聞を取って来て一面記事を読む。どうやったら目を引くことが書けるか。気になった記事は切り取ってノートにはっている。
 恐竜新聞は、教室の後ろのけい示板に毎週月曜日と木曜日にはっている。学校では昼休みは委員会活動、家に帰ってからは習い事に宿題もある。だから少しの時間も大切に新聞を書いている。右手の小指側はえん筆のよごれでいつもまっ黒だ。
「つかれるから、もうやめたら。」
と、母は心配して言ってくるけれど、それはちがう。恐竜のことを書いていると、心の底からワクワクして、他の何よりも楽しい。やらない方がストレスでむねが苦しくなる。
 だから、今日もぼくは恐竜新聞を書く。一人でも恐竜のすばらしさに気付いてもらえるように。明日の朝の会でも願いをこめて大きな声でこう言うぞ。
「新聞係からのお知らせです。恐竜新聞の二十五号を出したので、読んでみてください。」

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